冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
ぐらり、と視界がかしぐ。
手を引かれた勢いでよろめいて・・・いや、違うーーー

頭の軸がずれたような・・体に力が入らない。

リアネルの青い瞳と目が合った。
晴れわたる夏の空のようなその色彩は、そう暗雲の予兆をも秘めているーーー

膝が折れ、崩れそうになる体は、そのままどさりという感じでリアネルの腕の中へ。

やれやれ、とどこか遠近感を欠いたところで声が聞こえる。

「小賢しい理屈をこねるとは、さすがは貴族の娘というべきか」

・・・小公爵・・さま?

「それでこそ手に入れる甲斐があるというものか。いや、これは失礼、なかば予想はしていたもので。先ほどクリームを頼んでいる隙に、あなたのお茶にちょっとした薬をね」


なにを・・・このひとは・・・

言葉を発しようにも、舌もくちびるもなに一つ思うように動かない。うめき声のような声がもれただけだ。

「さて、仕上げだ。よい夢を、ミス・フロイラ」

なにか瓶のようなものが、顔の前にかざされた。

シュッ、と音とともに霧状のものが吹きつけられる。

あぁ・・・・

霞がかかったように、視界も思考もぼやけてゆく。
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