冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
左右に注意ぶかく視線をめぐらせる。

あ、いた!

動くものが視界をかすめた。小走りにそちらへ向かう。
と、不思議なことが起きた。

壁へ留まるかのようにみえた蝶の姿が、そのまま吸いこまれるように消えたのだ。

どうしてーーー?

慌てて駆けより壁をあらためると、すぐに謎は解けた。扉の横に、空気取りの孔があったのだ。おそらく窓のない部屋なのだろう。

ここから入ってしまったのね、これじゃますます外に出られないわ。

フロイラは扉のノブに手をかけた。
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