冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
十年以上ぶりに再会したフロイラは、なにも変わっていなかった。
想い出のなかのひたむきで愛らしい “フロー” のままだった。

幼き日の友であるルーシャを忘れられずに慕いつづけ、そしてーーーふたりを裂いた遠因である、男性による暴力をひどく嫌忌するようになってしまっていた。

フロイラの語るルーシャ像は、誰だそれはと首をひねりたくなるほど、それはそれは美しく賢く優しい聖人のごとき存在へと美化されおり、聞いていると全身がむず痒くなった。

ルーシャとのキスの想い出を、クラウスには見せたこともないようなうっとりした表情で語られた日には、出来の悪い喜劇を見せられているようだった。
本人が言うのだから間違いないが、それは下心だ。

ルーシャは崇められ、そしてクラウスはといえばフロイラが生理的なレベルで拒絶する、支配欲の権化のような男性に変貌を遂げてしまった。

恋敵は過去の(女装した)自分ときている。
誰のせいだ! 俺のせいか?
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