冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
ともあれ首尾よくフロイラの “身柄” を手にいれたものの、その先は大した考えがあるわけではなかった。
思えば、女性から一方的に想いを寄せられることはあっても、相手の気を引く努力などしたことがなかったのだ。

心許せる存在といえばリュカだけで、彼がいればなにも不自由は感じない。いつしかそんな環境に慣れきってしまい、人間関係を構築する方法さえ分からなくなっていた。

そして、フロイラはクラウスに対して怯えと緊張を解かず、好意を抱いている気配など微塵もないときている。

フロイラが気持ちを移すものは、人であれ物であれ我慢がならなかったので、彼女の所有物は残らず灰に変えた。
悪逆非道の限りを尽くそうとも、自分に気持ちを向けさせたい。無関心よりは憎しみの方がまだマシだった。

望まぬ結婚など強いられるくらいなら、死を選ぶことが実証済みである以上、こちらとしてはフロイラの気持ちを解きほぐす努力をするよりなさそうだった。
しかし、どうすればいいのだ。
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