冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
清楚で可憐なフロイラは、飾り立てて驕慢ささえ感じさせる令嬢たちの中にあって、目を洗われるように新鮮だった。
自分の見立てたドレスがまたフロイラを引き立てていると、内心自画自賛する。
女物の衣装のことは、かなり詳しいし、ついでにいえばリボンも上手に結べる。なにせかつては毎日着ていたのだ。

フロイラの信奉者となった男性たちから、せっせと手紙や贈り物が届くようになったが、むろん憫笑とともにすべて処分させた。
だいたいいくら思いを懸けようとも、フロイラは男性に関心がないのだから無駄なことだ。
しかし、それはそのまま自分にも当てはまると思うと暗然とする。

様々なことがあった。

芝居に連れていったフロイラは、夢中で舞台に見入っていた。隣に座るクラウスには、一度も目を向けず、オペラグラスでじろじろこちらを見てくる男どもの視線にも気がつかない。

子どもじみた激情にかられ、彼女を傷つけ、自己嫌悪に陥った。

なにをやっているんだ、俺は・・・
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