冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
犬たちが包囲の輪をしだいに狭めてくる。
殊勝なことを言っておきながら、彼の背にくっついてしまう。

彼の呼吸が荒いのが分かる。傷が深いのか・・・

ふん、とクラウスが皮肉めいたつぶやきをもらす。
「いつもそうしおらしければいいのにな」

侯爵様?
表情はうかがい知れない。

「ガウッ!」
一匹の吠え声を合図のように、間合いをつめてきた犬が数匹、同時に飛びかかってくる。

もうだめ!

目をつぶるのと、体をすっぽり包まれるのが同時だった。
クラウスが腕の中に自分を抱きしめているのだ。

そして、鋭い牙と爪に見舞われることは今度もまた、なかった。

犬たちが、同時にピタリとその動きを止めたのだ。

な、にがーーー!?

クラウスの腕の中で、ことの成り行きにただ混乱している。
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