冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
「俺を襲うことはない。だからといってお前を侵入者と認識してる事に変わりはないな」
フロイラの言葉を無視して、つぶやく。

番犬の群れは周囲を取り囲み、隙あらば飛びかかろうと狙っている。

「・・・血の匂いに興奮してるな」

クラウスの左手はだらりと垂れている。その手の甲から鮮血がつたい、ポタポタと草の上に垂れていることに、ようやく気づいた。さいぜん自分をかばって噛まれたのだ。

「お願いです、逃げてください」
その腕にすがって懇願する。

「バカ言うな、この状態でお前を置いて逃げられるか。俺の後ろにいろ!」
叫ぶと、ふたたび鞭を振るう。

「わたしはもう・・・」
一度死んだ身だ。

「相手がなんだろうと、逃げるのは性に合わん」
フロイラを背にかばい、鞭をかまえる。

多勢に無勢だ。いつまでも持ちこたえられるものではない。
このままでは二人とも・・・
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