冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
ボロ雑巾のようになったリリアの姿と、母を悲しませてしまうことを思うと、フロイラの目からは涙があふれて止まらなかった。

美しい少女は、リリアを元どおりにしてくれると言った。

「わたしはルシアナ。お母様やメイドはルーシャと呼ぶわ。
その先にある屋敷に住んでいるの。二日後にわたしを訪ねてちょうだい」

二日後、半分夢を見たのではないかと思いながら、おっかなびっくりフロイラは高い塀に囲まれたその屋敷の門の前まで行ってみた。

門の外で所在なげに立つフロイラを見とめて、すぐに園丁が屋敷の中へ駆けていった。
と、ほどなくしてあの美しい少女が現れたのだ。手には見違えるように清潔でぱりっとして、新しい服まで着せてもらったリリアを抱いて。
フロイラが大喜びしたことはいうまでもない。

おまけにルシアナはそのままフロイラを屋敷に招じ入れた。
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