お見合い相手は冷血上司!?
「ありがとう、母さん」

 いつもはゆっくりと香りを楽しんでから大事にコーヒーを飲む父が、今日は手に取ったそれを一気に流し込む。
 一瞬熱そうにグッと顔を歪めたけれど、その顔はすぐに険しく顰(しか)められる。

「……何かあったの?」

 私の問いかけに、父は表情を変えずカップの柄を強く握り締めている。
 そして勢い良く顔を上げた父は私にも聞こえるほど大きく息を吸い込み、意を決したようにようやく口を開いた。




――「亜子、お前……お見合いしないか?」

 …………ん?

 重苦しい空気はどこにやら、前のめりで私の顔を覗き込む父の言葉は、私の思考回路を完全に停止させた。
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