お見合い相手は冷血上司!?
 二階にある自室で慌てて着替えると、一度大きく深呼吸をしてリビングの扉を開けた。

「お父さん……? お待たせ」

 すぐに先ほどの父の姿が目に入る。
 いつも明るくお調子者の父がこんな風に項垂れている姿を見るのは初めてで、話の内容が只事ではないことは明白だった。

「亜子、おかえり。疲れてるのに悪いな。あ、CM録画しておいたから帰ってから観たぞ。とってもよかった。おめでとう」

「ありがとう……お父さん。お父さんたちこそ、こんな時間まで待っててくれたんだね。ありがとう。そんなに急いで話があったなら、言ってくれれば早く帰ってきたのに……」

 重苦しい空気を断ち切るように舞う芳醇な香りを辿ると、母がコーヒーを持って現れた。

「とりあえず、コーヒーでも飲みましょう」

 その芳ばしい香りは、父が特別な時にしか飲まないお気に入りのコーヒー豆の香り。
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