お見合い相手は冷血上司!?
 リビングから目と鼻の先にあるバスルームの扉に手を掛けると、突如後ろから肩を叩かれる。
 驚いて跳ね上がると、後ろからにっこり笑う母がひょっこりと顔を出した。

「お母さん……」

「ふふ。怒りが収まらないって顔ね」

「そりゃそうでしょ。お母さんまで一緒になって。いつからそんなに演技が上手くなったの?」

 不満気に口を尖らせていると、母は徐に目を細め真っ直ぐに私を見据える。

「……あなた、まだ慎二(しんじ)くんのことが忘れられないの?」

 思わずグッと喉を詰まらせたのは、優しさを帯びた母の真剣な眼差しのせいだと思いたかったけれど、ぎゅっと強く胸を締め付ける痛みに、すぐに久しぶりに聞いた名前のせいだと実感してしまう。
 
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