お見合い相手は冷血上司!?
「違うよ。もう一年以上も経ってるんだよ?」

「……そう。なら良かった。仕事を大切にするのももちろん悪いことじゃないけど、お父さんも、やり方は強引だけど決してふざけてお見合いを取ってきたんじゃないのよ? 亜子を心配してるんだってことは、わかってあげてね」

 母越しにリビングの扉を見つめた。
 先ほどまで響いていた音痴な鼻歌はもう聞こえなくて、耳をすませると、微かだがテレビの音が聞こえてくる。聞き覚えのあるメロディに、映像がすぐに頭に浮かんだ。

 ……これ、私の担当したCM。

 途端に胸の中がくすぐったくなって唇を噛み締めていると、その様子を見ていた母がクスッと笑う。

「仕事の息抜きだって思って、会うだけ会ってみればいいじゃない。ねっ?」

 照れくささと僅かな情けなさが心を支配して、掻きむしられるような激しい焦燥を感じた。
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