浅葱色の記憶

藤堂平助

屯所への帰り道


なんの変哲も無い壁が、妙に気になった



「どうした?」


立ち止まった俺に、斎藤が声を掛けた



それに気がついた皆が、振り返る



「……何か、思い出しそう」



皆が、期待の目を向ける



「藤堂さん これは、思い出さなくてもいい
ようなことですよ」


サクタと過去が重なった


「ごめん!!サクタ!!
どうでもいいとかいうなよ!」


「クスクス もう、言いませんよ」


サクタが嬉しそうに笑う



「それに、どうでもいいと言ったのは
この、壁のことだから」 



皆が、不思議がる



「平助!何思い出した?」


「えと……」


言い淀む俺の代わりに


「私と喧嘩した時のことでしょ?」


「喧嘩って… 俺が傷つけただけだろ」


「ううん 私も皆を避けて傷つけた」



「よくわかんねぇけど、過去より
これからのが、大事だろ?」



永倉君が言うとサクタは、すごく笑顔に




「そうですよね!
私もそう思います!
これから、皆とたくさん思い出を作りたい」






皆で、頷いた


そうだよな

これから良い思い出、作ればいいよな











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