浅葱色の記憶
原田さんが、部屋を出た

永倉さんと2人、ちょっと隙間を開けて
布団を敷く


お互い、妙に意識して
キスすらしない


恋人なのに、単なるルームメイトのような

ぎこちない関係が続いている






梅の花が咲き始めた頃だった


「サクタを貸してくれ!」



会津藩の佐々木さんが、頭を下げてきた


「私、ものじゃないんですけど…」

「5日でいい!5日!いいだろう?」

「何するんですか?」


内容によっては断ろう
女だとバレても困るし
何より、土方さんが尋常じゃない睨み方


「聞けば、料理の腕がいいそうだな」

「いいかどうか…
まぁ、残さず食べてくれるかなぁ」

「頼む!!!我が殿は、見廻組の発足で
病んでおられ、食欲不振でな
何か作ってくれないか!?」

「なんだ…そんなこと?」

「報酬も出す」

「やります!やらせて頂きます!
その代わり条件があります」

「なんだ?」

「1日作って駄目ならやめます
それと、ここから通います!」

「馬に乗れるのか?」

「乗れない」

「通いは、無理だ」

「じゃあ、佐々木さんが送迎してよ!?」


ついついタメ口になってしまった


「いいだろう!
送迎の条件として、娘姿になれ!」

「は?なんで!!」

「男と馬に乗る俺の身にもなれ」

「面倒くさい」

「お前なぁ」



佐々木さんと私の睨み合いが続き



「わかりました!娘姿になればいいんでしょ
5日間!毎日ですからね!」


「あいわかった!」




佐々木さんが明日くると言って
引き上げたあと


「勝手に了承すんな!」

「断れないくせに」


土方さんは、押し黙った


「言っとくけど
私は、上司とか気にしないから!
嫌なら断るし!手を出してくるなら
防御もします!手加減は無理!
それで向こうが怒るなら、私1人の責任として、切腹でもなんでもします!」


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