副社長には内緒!〜 Secret Love 〜
「じゃあ、片付けちゃうからゆっくりしてて」
「いろいろ、なんか悪いな」

申し訳なさそうに言った誠に、莉乃は笑顔を向けると、
「一人でも同じことするんだから、気にしないで。美味しいってご飯食べて貰えてうれしかった」
莉乃は素直に言葉が零れ落ちた自分に驚きながらも、コーヒーをマグカップに注ぐと、ソファにいた誠の前にコトンと置いた。
「ありがとう」
誠はコーヒーカップを手に取り、片付けをしている莉乃を見た。

(どうして俺は今日も誘ったんだ?。深入りするつもりなんてないのに。莉乃には深入りしてはいけない。大切な秘書だ。あくまで、これはお礼だ。それにしても、この空間は落ち着きすぎる……。自分が自分じゃなくなってしまう)

誠は自分の行動と気持ちのかみ合わなさに、大きなため息をつくと、さっきまで莉乃が見ていた眼下の景色を見た。

そんな誠の元に、ふわりと甘い香が漂い莉乃が隣に来たことが分かった。

「春には、綺麗にあの川沿いに桜が咲くの」
莉乃は下に見える景色を指さし、誠に言葉を掛けた。

「綺麗だろうな。ここには何年住んでるんだ?」

「買ったのは就職が決まってからだから、2年ちょっとかな?」
莉乃は思い出すよに答えると誠を見た。

「会社からは少し離れているよな」
「うん、あまり、都心はいやだったの。この景色が気に入ったし」

「うん落ち着くな。久しぶりだよ。こんなにゆっくりしたの」
誠はゆっくりと言葉を発すると、莉乃に笑顔を向けた。

「それならよかった。毎日仕事しすぎだもん。誠って仕事に関しては真面目だよね」

「なんだよ、仕事に関してはって」

誠に軽く睨まれ、莉乃はフフッと笑うと言葉を続けた。
「いつか、女の人に刺されないようにね。世の中には怖い人いるんだから」

「俺は、そういう女とは付き合ってないから大丈夫だよ」

「そういう女……。つまり、真面目な人とは付き合わないって事ね」
莉乃は小さくため息をつくと、ソファに座り誠を見上げた。

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