名無し。
交差地点

手紙


「とーもかっ!!」

肩を叩くと同時にあたしの前に現れる楓。

テンション高いなぁ。

それもそうかもしれない。

楓は体育が得意で、体育がある日はテンション

が高くなる。

まったく羨ましい。

美人でお姉さんで勉強も運動も出来るなんて。

少しだけでいいからあたしにも分けてもらいた

い。

そんな嫉妬を口にして楓にアタックしてみる。

「運動神経あたしにも分けてよ!ちょっとでい

いから、ね?」

だけど毎回。

「ざんねん、これは努力ですよ、友香さん?」

ことごとくかわされてしまう。

そんなくだらない話をして、学校への道を進む



「そーいえばさ、最近元島より佐藤と仲良いじ

ゃん、どーしたの?もしかしてぇ…???」

…え?

あぁ、そうか、あたし1週間記憶ないんだよね



…病院行った方がいいのかな?

今まで気にしてなかったけど結構やばいよね。

と言うより、また、佐藤君?

佐藤君と仲が良いってなんだろう。

たしかに昨日話したけど、特別仲が良いような

気はしなかったんだけどな。

だけどなんとなく、「違うから!佐藤君はチャ

ラそうだから無理よ!!」なんて否定しておい

た。

そんな会話をしていると学校に着く。

「あー、そだ!今日はあるかなー、"アレ"」

「アレ?」

楓が不思議そうな顔をする。

「アレだよ、ほら、いつもの!手紙だよ!」

手紙?なんのことだろう。

手紙なんて今時告白でも使われることなんてほ

とんどないし、もちろん連絡とるときにはもう

ほぼ使われていない。

今時手紙なんて…。

だけど、それはあった。

下駄箱を開けるとヒラリと桜が舞うように落ち

てきたのは真っ白な封筒。

拾い上げてみてみるけど宛先や差出人は書かれ

ていない。

そこに楓がため息をつく。

「あー、やっぱり。差出人突き止めたくなるく

らいしつこいよ、コイツ。」

「…うん。」

封筒を開けてなかを見ても、真っ白な紙。

少しだけよれている、普通の便箋。

何も、書かれていない紙。

だけど、そこに何かを感じる気がする。

おかしいかもしれないけど、あたし、この手

紙の差出人のこと怖くない。むしろ、熱い気

持ち。

なんなの。

あたし、やっぱり。忘れてる。

なにを?

分かんないよ。

だけど、大切なことを忘れてる。

「佐藤くん。」

振り返るとそこには眠そうにあくびをする佐藤

くん。

佐藤くんはあたしの手元を見て怪訝な顔をする



「あー、それ。俺んとこにもあったやつじゃん

。お前?それ入れてんの。」

佐藤くんも?

どうゆうこと?

あたしだけじゃないんだ。

だけど、それには理由があるのかな?
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