名無し。

きっと、普通なら目が覚めるだろう。

なのに。

なんで、夢から覚めないの。

悪夢で、起きて、冷や汗が背中を伝い、もう眠

れないって起きるでしょ。普通。

なのに。

あたしはずっと泣き続けて。

君の血がかさぶたみたいに乾燥して、落ちてい

く。

真っ白な空間の中の、ちっぽけなあたし。

泣くことしかできないあたし。

嫌だ。

君に、逢いたいよ。

涙は水溜まりから池へ。池から湖へ。湖から海へ

となるようにどこに染みていくわけでもなくどん

どん広がっていく。

水分不足になりそうな、そのくらい涙が出て止ま

らなかった。

急に足音が後ろから聞こえて体を強ばらせる。

さっきまで、誰もいない空間だったのに、急に足

音が聞こえたら不自然すぎて、怖かった。

誰!?

そのには、彼がいた。

さっき、どこかに行ってしまった彼。

何か、急いでいるようだった。

走って、息を切らせてこっちに来る。

近づいてくるにつれて分かる。

汗に紛れた涙。

雨に濡れてきたのか。

シャワーでも浴びてきたのか。

それほど彼の顔は汗と涙で濡れていた。

あぁ、彼も、君を思ってるんだよ。

早く、帰ってきてよ。

「渡…俺、まだ、お前に言ってねぇことあるん

だけど。まだ寝るのは早いだろ…ふざけんなよ

。」

彼も、あたしと同じようだった。

ねぇ、君に、まだ伝えてないことがあるんだ

よ?

帰ってきてよ。

聞いてよ。

ふっと、視界が真っ暗になる。

あれ?あぁ、そうか。また、夢。

君って、誰だっけ?

彼って、誰だっけ?

あたし、また忘れるの?

また、忘れちゃったの?

どうして…どうして?

どんなにもがいても変わることのない未来な

らあたしは最初から信じない。

だけど、君が、笑ってくれたから。

君が、あたしに教えてくれたから。

信じることも、笑うことも、強くなることも



全部、君にもらったのに。

あたしまだなにも返してないよ。

それどころか君の事忘れちゃうなんて。

君に、逢いたいよ…。
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