名無し。

失恋は出会いのきっかけ

水谷 友香 高校1年生。

初めてこんなにショックをうけた。漫画でしか

見たことがなかった。

あたしは今、失恋した。失恋は初めてで、どう

したらいいかわからない。

ただ目の前の光景が夢であってほしいと願うば

かりだった。

友達の林 菫と、あたしの好きだった人、元島

春斗。

菫をお姫様だっこして、嬉しそうにはにかむ春

斗の笑顔は幸せそうだし、菫だって、「降ろし

て!!」と言いながらも顔は真っ赤で、嬉しそ

うに見える。

文化祭で、公開告白をした春斗。

メチャクチャカッコよかった。だけど、告白の

相手はあたしじゃなくて菫で。

そして、菫の好きな人は春斗だった。

ここは友達として、喜び、祝福するべきなのか

もしれない。

だけどあたしは、できなかった。

そんな自分に嫌気がした。

なんだか自分がちっぽけで、惨めに感じて、静

かにその場を後にした。


トイレの鏡を見てため息を漏らした。

醜いな、あたし。

そう思っていたら後ろから親友の秦野 楓がそっ

と背中をさすってくれた。

「菫、春斗のこと好きだったんだね」

下手くそだろうけど、笑っていたかった。

じゃないと、あたしは泣いてしまいそうで、そ

んな姿は楓にも見せたくない。

だけど楓はそんなあたしにも優しく声をかけて

くれる。

「うん、友香。泣いてもいいんだよ?ってゆー

か、こーゆー時くらい、泣きな。」

「…ありがとう。」

あたしのちっぽけなプライドはいとも簡単に楓

には見透かされてしまっていた。

泣くなんて、ましてや人前で泣くなんていつぶ

りだろう。

あたしはそれからしばらく楓のそばで泣き続け

た。


しばらくして、泣き終わったけど目の腫れが引

かないため、あたしは保健室で寝かせてもらう

ことにした。

文化祭だって言うのに。

今日は最悪な日だな…なんて思いながらも泣き

つかれていたためすぐに眠れた。


…なんだろう、ふわふわする。

夢でも見ている感覚。

と言うより、夢かなぁ…なんて思いながら目を

開けるとそこは教室のようだった。

どうして、教室にいるんだろう。

しかも…あたし1人?

まどの外からは眩しく光が差し込んでいる。

蒸し暑くて体にベッタリと汗が滲む。

エアコンとか、この学校にはないの?と思いな

がら手で扇いでみる。

ダメだ。全く涼しくない。

嫌になって誰かの席に勝手に座っていると。

ふと、後ろに気配を感じて振り向いた。




< 2 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop