僕と家族と逃げ込み家
――と思ったところで、何の解決策も浮かばない。ひとまず……放置だ。
そんな僕に、「何となくだけど」と美山がフフッと微笑む。

「幸助君が突破口になるかも」
「……なるほど、喧嘩友達は最強ってか?」

笹口はニヤリと笑うと美山のサラサラの髪をガシガシしながら、「お前、本当に愛い奴だな」と撫で回す。

おいおい、美山が真っ赤じゃないか。
笹口はいつもこうだ。美山を子犬とでも思っているんじゃないのか?

本当、美山の気持も知らないで……恋心が分からない奴は馬に蹴られて地球一周でもして来い!

まったく! この二人を見ているとジレジレする。
いっそのこと僕が仲人役を引き受けてバラしてしまおうか、と思っていると……。

「哲ちゃんも愛い奴だよ」と美山がピンクの頬で宣う。

うっ、色っぽい! 喉元まで出かかった言葉と共に生唾をゴクリと飲む。僕にそっちの趣味は一切ないけど……本当、美山だけは別格だな。

そして、こいつ、笹口も同じように思ったのか、一瞬、瞳を見開くが、次の瞬間カッと真っ赤に純情硬派になる。

こういうの見ると、誰よりも美山が最強なんじゃないのかなと思ったりする。
二胡も美山には、ちょっとだけ気を許しているみたいだし……。
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