僕と家族と逃げ込み家

「なんだかなぁ」

塾生四人を見送った後、僕と笹口はコンビニでサイダーを買い喉を潤す。

「……ん? どうした」
「小学生に教えられたような気がする」

心の中で僕はニヤリと笑う。

「あんな軽い調子でキスしちゃいけなかったんだ」
「ああ、美山の件ね」

ちょっと惚けてみる。

「小学生でも分かっているのに……」

メチャ反省しているみたいだ。

「なぁ、笹口」
「何だ?」
「お前、僕にキスできるか?」

一瞬、笹口は何を言われたのか分からないような顔をした。だが、次の瞬間、目を剥き動揺したようにどもりながら言う。

「なっ何を、いっ言って、いっいるんだ! おっ男同士で」

お前なぁ、何を言うだ!

「あのなぁ、笹口。言っていることと、やっていることがバラバラだぞ」

笹口の顔にハテナマークが浮かぶ。

「美山も男だって言ってるんだよ」

その言葉で、笹口は初めて気付いたという顔をする。

「だから、幸助と二胡が言うところの『大好きな人、ただ一人にチューをする』じゃないのか?」
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