僕と家族と逃げ込み家
だが、僕の心の声など恵に届くはずもなく……。

「キャッ、嬉しい! 私ね、モグタンの縫いぐるみが欲しい!」

そう言って、恵は両手を広げ、「さっき見たこんなの」と大きく輪を描く。

「馬鹿か! そんな大きいやつ買う金などない! ストラップで我慢しておけ」

思わず出た言葉に、「あれ?」と首を傾げる。
上手く乗せられた? 目の端に恵と茜が目配せし合うのが見えた。

「じゃあ、もうひと遊びしてショッピングにしよう」

叔父の言葉に、「ラジャー!」と恵と幸助が元気に返事をするが、僕はとんだ出費だと肩が落ちる。

「それにしても、美味そうですね、それ」
「……ん?」

よく見れば、岡崎家は売店で買ったであろうハンバーガーやポテト、フランクフルトなどがトレーに乗っていた。

「母ちゃんの手作りだぞ。健太の父ちゃんも食べていいぞ」

「どうぞどうぞ」と叔父さんも勧める。

「いいの? これ喜子さんの手作りでしょう」

岡崎母が遠慮なく手を伸ばすと「ママ!」と茜がたしなめる。
どっちが親だか分からない。

「本当は私もお弁当を作る予定だったの」
「でも、寝坊したのよね」

茜の言葉に、岡崎母は「だって、昨日嬉しくて眠れなかったんだもん」とペロリと舌を出す。お茶目な人だ。
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