nocturne -君を想う夜-

ガァァと、唸るドライヤーで髪を適当に乾かして纏めると、肌に水分を取り込んでいく。
ある時を境にして、月日を重ねるのと比例して、失うものも多くなった気がする。
人は変化する生き物で、同じように時を過ごしていても経過によって心まで変わるのかもしれない。
赤ちゃんから子供へ、子供から大人へ、大人から老人へ。
成長し、成熟し、そして私はもう、認めたくないけれど老化の一歩目を踏み出しかけているのかもしれない、なんて失われた肌の張りを見て溜め息。

女性たるもの美しくありたい、そう思うのはもちろんだけれど、はっきり言って、美しさを保つ行為は面倒なことこの上ないと思う。
面倒だとは思うのだけれど、何もしなくてもお肌の張りを保てた時代なんてとっくに過ぎ去っている。
何にも気にしなくたってそれなりに見えていた歳のときは実際、お手入れなんて綿密にしなくても保てたのに、少しずつ弛んでいく肌に気づけば愕然として、綺麗でありたいと思える年齢になればなるほど、無頓着にできないなんて。

「現実って、面倒で残酷だわ」

鏡に写る自分は、先程と何ら変わり無く。
いつもと同じ顔をしてるんだろう。

「疲れた顔、してんじゃないわよ」

鏡の中の自分に、叱咤する。
憂いさえも色気に変わるなんてことは言えないけれど。
オンナ40、まだまだこれから!なぁんて。
活をいれたところでこの顔のパーツにも弛んだ肌にも変化が生まれるわけでもない。
だからせめて……

「シャキッとしないと、ねぇ」

顔のパーツもくすんだ肌も取り替えが利かないのならば、できることはただ一つだ。


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