nocturne -君を想う夜-

閉まった扉のこちら側で、一人泣き濡れたことを、今さら誰にも言う気はなくて。
あなたの前ですら泣かなかった私は、もう誰の前でも泣く気はなくて。
だから今、一人でいるのだろう。
悔いても悔いても、あの頃は戻っては来ない。

あなたがいたから頑張れた。
あなたがいたから私でいられた。
あなたといた頃にはそう思っていたけれど、不思議なもので、どうやら私は一人でもまだ頑張れるみたいだ。
ふたりでいた頃の幸せはなくとも、温もりはなくとも。
安らぎの時間はあるし、分かち合う幸せじゃなくとも噛み締める幸せもある。

ああ、なんだ。
それがきっと“私らしい”んだろう。
どこまでも馬鹿みたいに青臭くて、あなたのことを想って、それでも一人で生きている。
その全てが、きっと“私らしい”。
だからきっと、大丈夫。

ベッドに腰かけて、ぼんやりと月を見上げていたら、いつの間にか頬が濡れていた。
その跡を手のひらで乱暴に拭うと、缶に残っていたモスコミュールをグラスに全て注いだ。

流した涙は、どこにたどり着くのだろう?
誰も拭ってくれるはずもなくて、そんなことを思ったら再び涙が込み上げてくる。
なんの涙なのか、なんて、一言では言い表せない。
ただ独り、遠く見える月を眺めて、飲めないお酒を流し込む。


< 17 / 18 >

この作品をシェア

pagetop