意地悪な彼の溺愛パラドックス
大和くんは気にしないでとばかりに微笑み「そんなことより」と、感激したように含みを残してまた喉を潤す。
「遼が他人と素でしゃべってるところなんて、久しぶりに見たよ」
私は思わず首を傾げた。
素の柏木遼というのはユニークな冗談を言う彼のことでいいのだろうか。
仕事中とのギャップはあるが、やはりあれはそんなに珍しいものだったのかと本人を見つめる。
「そうなんですか?」
「さぁね」
素知らぬふりが得意な彼は、ただ肩をすくめるだけ。
もしかして私は特別説が浮上するも、勘違だと虚しいので浮かれる胸騒ぎを必死に押し殺した。
「遼はかよつんみたいな子が好みだったのか」
大和くんがまるでお父さんのような眼差しでしみじみと言う。
意中の彼の真意がわかるかもしれないと高鳴った胸を、さりげなく左手で庇った。
気にする素振りを見せぬよう、空になった箸先にモツをつまむため手を伸ばす。
ドギマギと奮戦する私の隣で、奴はフッと鼻で笑った。
「俺、美食派なんだけど」
「……美」
つまんだモツをポロリと落とすと、すかさず大和くんが彼を怒る。
「かよつんに失礼でしょ! まぁ、童顔だしね。かわいい系だと思うけど」
「大和くん、それフォローしてる?」
複雑だ。
やはり、笑窪がそうさせるのだろうか。
むくれる私を彼は見下ろしてクスクスと笑う。
「どう転んでも美人ではないよな。子供っぽいし」
私は頬を引きつらせて、沸々と煮えたぎる憤りを吐いた。
「なんか悔しい! 柏木さんなんかどうでもいいんだけど、なんか悔しい!」
ギリギリと歯ぎしりをしてフンッと彼に背を向ける。
(チッ、柏木遼。ムカツク奴)
……じゃなくて。
つい興奮して心にもないことを言ってしまった私はバカだ。
からかわれているのは重々承知しているが、それでも奴の好みではないということがショックなのは変わりない。
すぐムキになるからなおさら子供っぽいのだろうなと自分を蔑んでいると、大和くんがヨシヨシと背中をさすりながらコソッと耳打ちをしてきた。
「大丈夫。遼、子供好きだから」
「え?」
ニコッと微笑んだ大和くんが彼の方をチラリと見た後、またコソコソと耳もとに唇を寄せる。
「つまり……」
「大和! いい加減にしろよ」
言いかけたところで不機嫌そうな彼の低い声が背中で響き、私の身体はうしろからグッと引っ張られた。
「ぎゃ!?」
奇声をあげて寄りかかった私に、彼は「ガキ」と毒つく。
突然、襟首を引っ張ったのは彼なのに偉そうな態度は健在。
私は体勢を立て直しながら不満をつぶやくが、それよりもお互いをよく知っている様子のふたりに興味が沸いた。
大和くんは誰とでも表裏なく気さくに話す人なので不思議に思ったりしないのだが、柏木遼が仕事上の誰かとナチュラルに話すのは奇妙だ。
私が彼のプライベートを知らないだけだと言ったらそれまでだけれど、今まで単純に翻弄されてきたわけではない。
現に大和くんは私たちを見て驚いていたわけだし、ふたりの間になにかを感じ彼に尋ねた。
「大和くんと仲良しなんですね?」
「仲良しっていうか、幼馴染」
「えっ! そんな気配ゼロでしたよ。お店に来ても、ふたりが話しているところなんて見たこともないし」
「大和はどうでもいいじゃん。俺はバカヨに会いに行ってるんだぞ」
ドキリとする言葉だが、隠された執着愛を感じるのが悲しいところだ。
それにしても幼馴染で同系の職業に就くなんて、ふたりともゲーム好きなのだろうか。
私は大和くんがよくトリップするアーケードゲームを思い出し、パンッと両手のひらを打った。
「遼が他人と素でしゃべってるところなんて、久しぶりに見たよ」
私は思わず首を傾げた。
素の柏木遼というのはユニークな冗談を言う彼のことでいいのだろうか。
仕事中とのギャップはあるが、やはりあれはそんなに珍しいものだったのかと本人を見つめる。
「そうなんですか?」
「さぁね」
素知らぬふりが得意な彼は、ただ肩をすくめるだけ。
もしかして私は特別説が浮上するも、勘違だと虚しいので浮かれる胸騒ぎを必死に押し殺した。
「遼はかよつんみたいな子が好みだったのか」
大和くんがまるでお父さんのような眼差しでしみじみと言う。
意中の彼の真意がわかるかもしれないと高鳴った胸を、さりげなく左手で庇った。
気にする素振りを見せぬよう、空になった箸先にモツをつまむため手を伸ばす。
ドギマギと奮戦する私の隣で、奴はフッと鼻で笑った。
「俺、美食派なんだけど」
「……美」
つまんだモツをポロリと落とすと、すかさず大和くんが彼を怒る。
「かよつんに失礼でしょ! まぁ、童顔だしね。かわいい系だと思うけど」
「大和くん、それフォローしてる?」
複雑だ。
やはり、笑窪がそうさせるのだろうか。
むくれる私を彼は見下ろしてクスクスと笑う。
「どう転んでも美人ではないよな。子供っぽいし」
私は頬を引きつらせて、沸々と煮えたぎる憤りを吐いた。
「なんか悔しい! 柏木さんなんかどうでもいいんだけど、なんか悔しい!」
ギリギリと歯ぎしりをしてフンッと彼に背を向ける。
(チッ、柏木遼。ムカツク奴)
……じゃなくて。
つい興奮して心にもないことを言ってしまった私はバカだ。
からかわれているのは重々承知しているが、それでも奴の好みではないということがショックなのは変わりない。
すぐムキになるからなおさら子供っぽいのだろうなと自分を蔑んでいると、大和くんがヨシヨシと背中をさすりながらコソッと耳打ちをしてきた。
「大丈夫。遼、子供好きだから」
「え?」
ニコッと微笑んだ大和くんが彼の方をチラリと見た後、またコソコソと耳もとに唇を寄せる。
「つまり……」
「大和! いい加減にしろよ」
言いかけたところで不機嫌そうな彼の低い声が背中で響き、私の身体はうしろからグッと引っ張られた。
「ぎゃ!?」
奇声をあげて寄りかかった私に、彼は「ガキ」と毒つく。
突然、襟首を引っ張ったのは彼なのに偉そうな態度は健在。
私は体勢を立て直しながら不満をつぶやくが、それよりもお互いをよく知っている様子のふたりに興味が沸いた。
大和くんは誰とでも表裏なく気さくに話す人なので不思議に思ったりしないのだが、柏木遼が仕事上の誰かとナチュラルに話すのは奇妙だ。
私が彼のプライベートを知らないだけだと言ったらそれまでだけれど、今まで単純に翻弄されてきたわけではない。
現に大和くんは私たちを見て驚いていたわけだし、ふたりの間になにかを感じ彼に尋ねた。
「大和くんと仲良しなんですね?」
「仲良しっていうか、幼馴染」
「えっ! そんな気配ゼロでしたよ。お店に来ても、ふたりが話しているところなんて見たこともないし」
「大和はどうでもいいじゃん。俺はバカヨに会いに行ってるんだぞ」
ドキリとする言葉だが、隠された執着愛を感じるのが悲しいところだ。
それにしても幼馴染で同系の職業に就くなんて、ふたりともゲーム好きなのだろうか。
私は大和くんがよくトリップするアーケードゲームを思い出し、パンッと両手のひらを打った。