イケメン小説家は世を忍ぶ
「間に合わないんじゃないかと思って気が気じゃなかった」

ケントは私の顔をじっと見つめると、ギュッと抱き締めた。

本当は自分も彼の背中に手を回して思い切り抱きつきたい。

でも……セシリアさんの顔が浮かんできて、こうして抱き締められるのにも罪悪感を感じた。

……胸が痛い。

彼から離れなきゃ。

ケントの胸を両手で押して彼から離れると、彼は驚いた顔をして私を見た。

「結衣?」

「……助けて下さってありがとうございました、殿下」

ケントから目を逸らし、彼と距離を取るようにわざと敬称で呼ぶ。
< 272 / 284 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop