イケメン小説家は世を忍ぶ
全てはベストセラーになる原稿のため。

まあ、私のお給料が上がるも下がるも桜井先生次第。ここは私が大人になって耐えるしかない。

彼も下僕のように私を使って音を上げないか試しているのかも。

だったら負けるもんか。

桜井先生のわがままに付き合って原稿さえ手に入れば、私はあと六日で自由の身になる。

そんなことを考えながら桜を見ていたら、「もういいぞ」と彼に声をかけられた。

どんな絵を桜井先生が描いたのか気になって、彼の元まで行ってスケッチブックを覗き込む。

「これ……私?」

そこには、妖精のように綺麗な女性が桜を眺める姿が描かれていた。

先生にはこんな風に私が見えているんだろうか?

五分もなかったはずなのに、こんなに綺麗に描けてしまうなんてすごい。
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