イケメン小説家は世を忍ぶ
聞かなくても、ずっと見ていたのだから結衣が遊んでいたわけではないのは知っている。

知ってて彼女をからかうのだから、俺も相当意地が悪いのかもしれない。

だが、結衣がムキなるのが面白くて、ついからかってしまう。

俺の本の感想を聞くと、結衣は目を輝かせながら感嘆の言葉を口にした。

その後、結衣を食事に誘ったのは、腹が減ったのもあったけど、もう少し彼女のことを知りたいと思ったからだ。

途中桜並木の下を結衣と歩いて、小説のアイデアが浮かぶ。

すぐに話を書きたくなり、夕食後強引に彼女を家に連れて帰った。

「いいシチュエーションを思い付いたから、口述タイプしてくれ」

結衣にそう頼むと、彼女は仕事ということで素直に応じた。

深夜に近かったし、仕事を依頼するには非常識な時間であるのは重々承知していたが、創作意欲が湧いてきて朝まで待てなかった。
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