俺に彼女ができないのはお前のせいだ!
上下左右に揺れるバスから外の景色を眺める。
ペラペラ楽しそうに話しているおばさん軍団の声に時々顔をしかめつつ。
俺は、親父の説教タイムでの言葉をぐるぐると思い出していた。
『計画性はない、すぐ怠ける。どうしてお前は成長しないんだ?』
『お前はいつも言い訳ばかりだな。必死にやったらそんな言葉出てくるわけがないぞ』
高い壁みたいなものに立ち向かっては、負けて。
時々登れそうになっては、さらにその壁は高くなって。
常に、何かを追いかけざるを得ない状況を作り出されてきた。
今まで、自分は満たされている、と思ったことはほとんど無かった。
ガタン、と大きくバスが揺れた。
太平洋まで続いている広い川にかかる橋を渡っていた。
病院まであと少し。
弱っている親父を見るのは、ちょっと怖い。
『謝るヒマがあるなら考えろ! 次100点取るにはどうしたらいいんだ?』
『そんなのはできて当たり前のことだ。今更かかげる目標でもないだろ!』
確かに、親父は俺に厳しい。
だけど、手を上げることはないし、学年トップになれ、と無理な目標を強いられたこともない。
必死になって頑張れば何とか届きそうなところを上手くついてくる。
今まで、部活でレギュラーを勝ち取ったり、テストも目標順位に入ったり、達成できたこともある。
学年5位はさすがにダメだったけど。
ただ、昔は優しかった気がするのに。
小学生になった頃から、俺には親父にほめられた記憶がない。
俺は、ずっと親父に認められたかったのだろうか。
「……んなわけねーよ。バカじゃね自分」
誰にも聞こえないようそう吐き捨て、バスを降りた。