俺に彼女ができないのはお前のせいだ!
自転車を猛スピードで漕ぎながら、右手を上げて風をつかむ。
時速80kmくらいの車の窓から手を出すと、ちょうどおっぱいの感触になるらしいが、
チャリのスピードじゃ全然ダメか。ちっ。
バイトで疲れていたはずなのに、あっという間に家に到着した。
玄関ドアを開けようとした時、低いエンジン音と明るい光に全身が包まれた。
家の前に停まったのは、一台の高そうな車。
ひょこんと助手席から出てきたのは、制服姿のアリサだった。
「じゃーね、アリサちゃん」
「うん。バイバイ」
さっさと家に入ればいいのに。
なぜか俺の手足は止まっていた。
車の窓越しに見えたのは、モデル系のイケメン大学生。
こいつが今のアリサの彼氏だ。
俺たちの前から車が走り去ると同時に、アリサと目が合う。
「……あ。良ちゃん。今、帰り? 遅いんだね」
さっきまで彼氏に笑顔で手を振っていたはずなのに。
俺を見るなり、戸惑った顔になった。
アリサの家には電気がついていない。
今日は親が仕事でいない日だろうか。
「まあ、バイト始めたから。お前、今日晩メシは?」
「今日は大丈夫だよ。彼氏と食べてきた」
「ふーん。仲いいじゃん。彼氏と。続いてんじゃん」
そう伝えると、アリサは首をかしげながら「ん~~……」と悩ましげな声を出した。
あ、これ。そろそろ別れようとしてるやつだ。分かりやすっ。