俺に彼女ができないのはお前のせいだ!
せまい一方通行の道路をはさんで俺たちは向き合っていたが、
アリサはゆっくりと俺に近づいてきた。
「それよりさー。良ちゃんバイト始めたんだ。どこで?」
「駅前のカフェだけど」
「へー。今度遊びに行っていい?」
「何で?」
「良ちゃんが働いてるとこ見てみたい」
「…………」
とっさに『絶対来るな!』と言いそうになった。
まだペーペーだし。接客の才能ないし。
いやいやいや、待て俺。
バイトは疲れたがその分いいこともあったし落ち着こう。
今日はこいつ、1人で夜を過ごすんだ。
きつい言い方して、傷つけてしまったら後味が悪い。
彼氏への熱も冷めてきてるみたいだし。
「まあ。仕事慣れた頃になら。別にいい……」
「え、本当ー? 楽しみ!」
俺が最後まで言い切らないうちに、テンション高くそう返された。
アリサは嬉しそうに目を細めて、ほっぺと口角を上げている。
さっき彼氏に向けていた笑顔よりも、本心が入った表情。
最近、アリサに冷たくしていたからか、久々に彼女のこういう顔を見た。
俺が放った一言だけで、こんなにも喜んでくれるのか。
彼氏よりも俺の方がアリサを笑顔にできる。
そのことに優越感を持った反面、
イラッとした。