俺に彼女ができないのはお前のせいだ!



「ありがとうございました。エナさんのおかげで慣れた気がします」



「本当ー? よかったー! 店長もほめてたよ。いい感じになったって」



今日はエナさんと同じ時間に勤務終了。


時間は夜8時。


駅前通りはサラリーマンや学生たちであふれていた。



俺は学校帰りにつき制服。


エナさんは肩に羽織ったライダースに、ミニ丈のワンピース。


彼女だけ行き交う人たちから浮いて見える。


もっさい地方都市に、1人だけ都会の女子が紛れ込んでいるかのよう。



そのままエナさんと雑談しながら、交差点を渡った。


俺はチャリを取りに駅の駐輪場へ行こうとしたが。



「柳井くんってこの後ヒマ?」


「はい。まぁ、帰るだけっすけど」


「じゃあご飯行かない? おごるからさー」


「や、悪いっすよ」



ちょ、イマドキの美人さんと2人でご飯? しかもおごり?


おいおい待て待て。これってあのパターンじゃね? ハニートラップ的なやつ!



戸惑った俺は、いったん後ろに引いたが。



「いいじゃん、暇なんでしょ? 行こう行こうー!」


「や……その」


「……ダメかな?」


「あ、はい。じゃあ是非」



言葉に甘えることにした。



断ろうとした瞬間、

その目の奥に、寂しさのようなものが見えたから。



時々、アリサが見せてくる表情と、どこか似ていた。


< 143 / 269 >

この作品をシェア

pagetop