俺に彼女ができないのはお前のせいだ!
「ありがとうございました。エナさんのおかげで慣れた気がします」
「本当ー? よかったー! 店長もほめてたよ。いい感じになったって」
今日はエナさんと同じ時間に勤務終了。
時間は夜8時。
駅前通りはサラリーマンや学生たちであふれていた。
俺は学校帰りにつき制服。
エナさんは肩に羽織ったライダースに、ミニ丈のワンピース。
彼女だけ行き交う人たちから浮いて見える。
もっさい地方都市に、1人だけ都会の女子が紛れ込んでいるかのよう。
そのままエナさんと雑談しながら、交差点を渡った。
俺はチャリを取りに駅の駐輪場へ行こうとしたが。
「柳井くんってこの後ヒマ?」
「はい。まぁ、帰るだけっすけど」
「じゃあご飯行かない? おごるからさー」
「や、悪いっすよ」
ちょ、イマドキの美人さんと2人でご飯? しかもおごり?
おいおい待て待て。これってあのパターンじゃね? ハニートラップ的なやつ!
戸惑った俺は、いったん後ろに引いたが。
「いいじゃん、暇なんでしょ? 行こう行こうー!」
「や……その」
「……ダメかな?」
「あ、はい。じゃあ是非」
言葉に甘えることにした。
断ろうとした瞬間、
その目の奥に、寂しさのようなものが見えたから。
時々、アリサが見せてくる表情と、どこか似ていた。