俺に彼女ができないのはお前のせいだ!


「良一くん、今すごいドキドキしてるでしょ」


「えっと……その……」


「どうしてそんなに悩んでるの? 行こうよぉ」


「…………」



きっと、ここで断ったら男じゃないっ!



そうだろうけど。


そうなんだけど……。



もちろん祖母の勤務先であるこのホテルには入りたくない。


でも、それ以上に何かがしっくりこない。踏み出すことができない。


どーてー卒業のゴールテープが俺を待っているのに!


一体、なぜだ? なぜなんだ!



心に生じている違和感の正体を必死になって考える。



すると――



『良ちゃん。私、買い物して家で待ってるね』



急にアリサの甘ったるい声が、脳内に鳴り響いた。


今日あいつご飯作ってくれてるらしいし、約束は守らなきゃいけない。



だけどさぁぁ、


なぜ俺の男チャンスにいつもお前が現れてくるんだ!?



そして、もう1つ思い出した。



『良一くんって、死んだ弟に似てるんだ』



以前にエナさんがつぶやいたこの言葉だ。



これは本当なのか。ただの口説き文句なのか。


確かめたいが、今はその時ではない。

< 166 / 269 >

この作品をシェア

pagetop