俺に彼女ができないのはお前のせいだ!
ただ、ここでエナさんに流されてはいけない気がする。後悔する気がする。
というわけで、目の前にぶらさげられた人参をパーンとはねのけ、
俺は安全な道を選ぶことに決めた。
「すんません! 俺、彼女いたことないし、どーてーなんで今すげーテンパってます! ぶっちゃけ心の準備できてないんで、全然決心できないんです! ヘタレと俺を笑ってください! もう少し考えさせてください! 後日改めて返事させてください!
あと、できればここじゃないホテルがいいっす!」
頭を下げ、必死にエナさんにそう訴えた。
くそぅ。なんてダサいんだ自分。本当は俺だって本物の男になりたいのに! ちくしょう! ちくしょうめー!
1人で虚しさ・悔しさ・情けなさにひたっていた俺だったが。
「……ぷっ。あはははっ!」
エナさんの笑い声が聞こえたため、顔をあげた。
「分かった。あははは! すっごく可愛いー。やばーい。良一くんみたいな男の子、久しぶりすぎてウケるー」
エナさんはお腹をかかえて爆笑していた。
うまくこの場面を切り抜けることができたらしく、安心する俺。
駅前通りに戻る途中、「本当、すみません……」と謝ると、
「ううん。私こそごめんね。いじわるしすぎちゃったかな。携帯も返すね」とエナさんは明るく言ってくれた。
ただし、別れ際。
「次は楽しみにしてるね」とエナさんに耳元でささやかれたため、
再びドキーンと心臓が飛び出そうになった。