俺に彼女ができないのはお前のせいだ!
アリサは、ぱちぱちと長いまつげを揺らしてから。
ごろんとベッドに寝転がり、俺の通学カバンのファスナーをいじりだした。
「……別にいいよ。あたしだって早く男の子とそういうことしたいし」
「何で? 急ぐようなことじゃなくない?」
うーわ。どーてーのお前が何言ってんの? しかもすげーモラル人材的な発言してるー!
と、空想上のもう1人の自分が、ツッコミをしてきたが。
構わず、俺はアリサの次の言葉を待った。
どれくらい、無言の時間が流れたのだろうか。
ご飯出来たよー、と1階から母の声が聞こえてくる。
ようやくアリサは口を開いた。
「友達のゆみちゃんが、もう彼氏としたって言うから」
「…………」
「だから、あたしも……早く、しなきゃって」
「……………………は?」
なんだよそれ。
友達と張り合ってるだけ?
そういえば。アリサはまわりの女子たちよりも常に最先端をいこうとしている。
流行りの小物とか服装とか、校則違反のメイクとか、美容室でトリートメントとやらをしてもらってるらしい髪の毛とか。
イケてる男子を彼氏にしたりとか、アリサには負けるもののルックスの良い女友達とか。
だけど――
同じ空間にいるこの女子は、可愛いし、大人びているし、すぐ男を振るし、スペックが高いはずなのに。
今は、価値が低いものに見えてしまった。
「何、その理由。マジしょーもない」
そう吐き捨て、俺は部屋から出て階段を下った。
少ししてから、とぼとぼとアリサも1階に降りてきた。