俺に彼女ができないのはお前のせいだ!
親父の手術から3日たった。
普通の病室に移動したものの、まだ意識は戻っていないとのこと。
俺はお見舞いに行くことができなかった。
意識のない人にレギュラーになりましたと報告しても意味はない。
あと、弱っている親父を見たくなかったから、だと思う。
家に帰り、疲れきった顔の祖母と2人で夕食をとった。
母は病院で親父を見てくれているらしい。
「あのさぁ。知ってたの? 親父の体のこと」
沈黙に耐えられず、俺はそう尋ねた。
祖母はゆっくりと首を横に振り、口を開いた。
「まぁ、昔っから自分のことはほったらかしで、人のことだの、まわりのことだの、そんなのばかり優先する子だったからねぇ。早く病院行けばよかったのに。本当バカな息子だよ」
俺は、ここ数日間で、親父のことが一気に分からなくなった。
15年間も一つ屋根の下で暮らしてきたはずなのに。
もちろん、自分の気持ちも分からない。
「洗い物、俺がやるから。ばーちゃんは休んでて」
俺がそう伝えると、祖母はありがとうねと言って、部屋に戻っていった。
母が作り置きしていたカレーの鍋は、固まったルーがところどころにこびりついている。
スポンジに洗剤をたくさん含ませながら、ごりごりと洗う。
何度こすってもゆすいでも、カレー臭さが取れない。
「……ちっ」
親父が倒れて『悲しい』と素直に思えない自分が嫌いだ。
ただ――
親父さえいなければもっと楽に、楽しい毎日を送ることができる。
そう思っていたはずなのに、毎日が気にくわない。
とりあえず、早く起きてこいよクソ親父。
レギュラー取ったし、学年5位もたぶんイケたからさぁ。