甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

 セオは従者としてユアンについていき、森の狩猟館にはフィーネ
 一人だけになった。

 灯りはつけず、暖炉の火だけが唯一のリビングのソファに、フィーネは
 身じろぎもせず座っていた。

 ソファテーブルには、ユアンと一緒に買ったオーナメントが広げられていて
 レースについたグリーンのガラス玉が、暖炉の明かりに鈍く光っている。

 闇はすっかり辺りを覆い尽くし、フィーネ以外に誰もいない館の中は
 静かだった。

 ミトラの夜をこんな風に一人で過ごすのは、初めてじゃない。

 ボルドール家にいたときも、貴族を招いてのパーティーには出席させて
 もらえなかったし、その晩はクララも特別に、パーティーにでてよかった
 からフィーネは部屋で一人ですごした。



   「だから、こんなこと別に平気」



 そう声に出して言ってみる。

 静かな部屋にフィーネの言葉は、吸い込まれるように消えていったが
 無駄な強がりに抗議するように、くぅぅうーとお腹がなった。

 こんなときでも、お腹はすく。

 フィーネはがっくりと肩をおとしたが、気をとりなおし、なにか食べ物を
 探そうと厨房へとむかった。





 厨房のランプに灯りを入れ、火を落としていないキッチンストーブを
 掻きたて、やかんをかける。

 パンとりんごぐらいはあるかもしれない、そう思って食品棚を覗いていた
 フィーネの目の前にぬっと丸いものが突き出された。



   「セオ?」

   「まだ、グースベリーのリースが買えたから買ってきた、それから
    エインズワース邸の厨房からくすねてきた食い物」



 そう言って、セオが紙袋とワインとリースをキッチンテーブルに置く。



   「ミトラ祭を祝おうぜ」
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