甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

   「私は行かないわ」

   「イリーナは、エリザも一緒にって言ってくれてるけど」

   「病弱の妹が、のこのこパーティーなんかに出かけていったら
    変でしょ」



 オルセン家の兄妹であるユアンとフィーネは、エインズワース子爵邸で
 ひらかれるミトラ祭のパーティーに招かれたのだった。

 一年で一番、闇が長く深くなる今夜は、家中に灯りをともし、親しい人
 たちとご馳走を食べ、酒を飲み、賑やかに過ごす。

 だから盛大なパーティーがひらかれることも少なくなかった。

 イリーナはオルセン伯爵と過ごしたいにきまってる。

 ユアンだって願ったりかなったりだろう。

 むこうでおとなしくしていればいいからとパーティーに行くことを
 すすめても、行かないと言い張る、頑ななフィーネの言葉と態度に
 ユアンはフィーネのために準備したドレスをちらりと少し残念そうに
 見たが、肩をすくめると言った。



   「わかった、なるべく早く帰ってくる」

   「結構よ、ゆっくり楽しんできて」



 なんでもないことのようにそう言ったけど、それはフィーネの精一杯の
 強がりだ。

 ミトラの日には、親しい者同士が額にキスを交わし合う。

 今晩、ユアンが誰に一番最初にキスをするか、そんなの考えてみなくたって
 わかってる。

 それを間近で見ているなんて、絶対に嫌だ。

 
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