甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
「理由はわからない。エインズワース子爵が持ち主でいても
なぜか呪いはおこらない。子爵の手を離れて他人の手に渡ると
その持ち主は呪われる。そして、転々としてエインズワース
子爵のところに戻る。曰く付きの宝石を手に入れたいっていう
酔狂な人間に今まで何回か盗み出されているけれど、呪いの
力で持ち主を消して、子爵の元へ戻ってくるらしい」
「そこまでわかってて、子爵に返すつもりなら、もうやらなくても
いいじゃない」
「駄目だ、僕も酔狂な人間のひとりだから」
むっとフィーネは口を尖らした。
そんなの命をかけてすることじゃない。
でも、ユアンはやるだろう、フィーネが止めたって何をしたって。
「その宝石、一旦自分のものにしたら、すぐ返すわね?」
「ああ」
「それでもう、詐欺なんてやめるわね? もう、嘘はつかないわね?」
「......」
考え込むユアンの前にフィーネはぱっと手をつき、身を乗り出してユアンの顔
を覗きこんだ。
「ねえ、ユアン、あなたは自分が汚れてるって言ったけど、そんなこと
ないわ、あなたが自分で汚したんじゃないもの。
でも、詐欺を続けるってことは、自分で自分を汚すことよ。
嘘なんかつかなくったって、あなたはやっていけるし、汚れは洗えば
おちるもの」
「洗えばおちる?」
ユアンが悩んだように首をかしげた。
「そう、これからの毎日を正直に生きる、それが洗うってことよ」