甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

 得意そうに、出来の悪い生徒に言ってきかすように、フィーネは指
 を一本たててそういうと、ねっ、と首を少し傾けてユアンを見る。

 キョトンとした顔をしていたユアンは、ぷっとふきだすと、たてた膝に
 顔をふせて、くっくっくっと笑いだした。



   「な、なによ、人が一生懸命言ってるのに」



 フィーネは今度はぷうと頬をふくらませた。

 まったく、笑うなんて失礼だわ!!

 まだおかしそうに口許を歪めながら顔をおこしたユアンがフィーネの頬を
 つつく。

 なによっ、そう文句を言おうと口を開きかけたけど、ぐっとユアンが
 フィーネの頭の後ろを引き寄せたから、声にならなかった。

 近づいたユアンの唇が、これ以上は優しくできないというぐらいの
 触れかたでフィーネの唇にふれる。

 一度、二度と離れては、またふれる。

 探るようにユアンの右手が、フィーネの手を探して動き、フィーネの指
 をしっかりと握りこむ。

 ユアンはなかなかフィーネを離さなかった。

 薄闇に沈んでいくリビングの暖炉の前で、二人は組み合わせるように
 手を握り合ったまま、長いキスを続けた。





 はぁーとため息が漏れる。

 階段の途中に腰をおろし、フィーネは指先を唇にそっとあてた。

 はぁーとまた空気が漏れるようなため息を落としながら、フィーネは考える。

 なんだったんだろう、あのキス......。

 
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