甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

 何かに導かれたように、閉じていた瞼を開ければ、そこは青い世界。

 広くもあり、同時に狭くも感じる。

 何もなく、なぜかとろりとした密度を感じる空気だけがある。

 薄ぼんやりと明るくて、まるで水の底にいるようだとフィーネは思った。



   「おや、めずらしい、目をさますとは」


 突然近くで声がした。

 青い空気の中に華奢な少女の姿が浮かびあがる。

 銀の髪を高い位置でひとつに括り、神話の中の女神のように薄いトゥニカ
 一枚を身につけている。



   「あなた......誰?」


 フィーネの声に少女は驚いた顔をした。



   「私が見えるのか?」

   「姿は見えるし、声だって聞こえるわ」


 そう言いながら、フィーネがもう一度確かめるように周りを見回すのを眺めて
 いた少女は



   「ここはサファイアの中だ」


 と言った。

 サファイアの......、だからこんなに青く見えるの......。

 じゃあ、これが呪い? 次々と人が消えたのは、サファイアの中に
 取り込まれたから。
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