甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

   「やったよ、手に入れた」



 そう言って、ユアンが取り出したベルベッドの箱をフィーネは見つめた。

 だが、すぐフィーネは、眉をよせる。

 この中にはブルー・サファイアがある、でも、それは......。



   「見てみる?」


 ユアンはフィーネの表情には気づかぬようで、嬉しそうな声でそう言ったが
 フィーネは、返事を言い淀み、蓋を開けようとするユアンの手をとめた。



   「開けないほうがいいわ」

   「どうして?」

   「なんだかそんな気がするの」

   「呪いを気にしてる? そんなにすぐ呪われるものじゃないよ」

   「でも......」



 フィーネの不安を裏付けるように、その時室内に、さぁーと風が舞った。

 くるくると渦を巻くような風が、ユアンとフィーネに強く吹きつける。

 家の中なのに、どうして?
 
 そう思い、風の勢いに閉じそうになる目を必死で開ける。

 すると、銀の髪が目の前で揺れ、だんっとユアンが壁に押し付けられるのが
 見えた。



   「うっ」



 銀の髪をなびかせた、あの時の少年が、ユアンを押さえつけたまま低い声で言う。



   「返せ、ブルー・サファイアをもとに戻せ」

   「なっ......」



 ユアンが抗い、少年を押し戻した拍子に、サファイアの箱がユアンの手を離れ
 階段下の転げ落ち、箱からとびだした、サファイアが、きらりと光った。

 階段を駆けおりたユアンが、サファイアを掴もうとする。



   「あっ、駄目!」



 何が駄目なのかはわからない、でもあれに触れちゃいけない、とフィーネは
 ユアンを止めようとし、必死にユアンの背中に飛びついたが、ユアンの手は、
 もうサファイアに届いていた。

 目が眩むほどの鋭い光がサファイアから発せられ、辺りをつつみ、そしてすべてが
 わからなくなった。

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