甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
ブリオデグの日のあと、ユアンはまた少し体調を崩した。
三日ほどベッドで過ごしたユアンは、四日目にになってやっと普通に起きて
新しい作品を書き始めていた。
ユアンが執筆に夢中になっている隙にと、フィーネは部屋をでる。
なにしろすぐにそばに呼びつけられるから、家事が溜まりに溜まっていて
フィーネは、水桶を引っ掴むと中庭にでたが、急足で井戸にむかうフィーネを
店の表からまわってきた娼婦の一人が呼び止めた。
「ちょっとあんた」
フィーネが立ち止まると、その娼婦は上から下までじろじろと観察するように
フィーネを見て、それからやっと口をひらいた。
「あんたに会いたいって、人が来てるよ」
カリカリと軽快にペンを走らせていたユアンは、少し疲れをおぼえ顔を
あげた。
書き始めたのは、悲しい犯罪者の男の話。
でも、その男はひとりの女性に出会い、変わっていく。
全てを受け入れてくれたその女性と結ばれて、最後はハッピーエンドだ。
ちらりと書きかけの紙を見て、ピンと指で弾きながら、苦笑いの混じった声で
「話はどうとでもできるとして、現実はどうだ」
と呟いたユアンは、デスクに肘をつき、くしゃりと前髪を握りつぶした。
今まで散々、利用できるだけ利用して、フィーネがユアンのことを最低、
最悪な犯罪者だと思っていることはわかっている。
だけど、フィーネはいつだって、ユアンを見捨てようとはしない。
それが、彼女の人を放っておけない性格のせいだとしても、少しは脈が
あるんじゃないかとユアンは思っている。
僕のキスを彼女は嫌がらない......、だから......。
とそこまで考えて、ユアンは、ちょっとだけと言って部屋をでていった
フィーネが戻ってこないことに気がついた。