甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
目覚めてからこっち、なぜかフィーネがいないと落ち着かない。
身体の苦しさが、フィーネがそばにいると楽になる。
いい知れない焦燥感にかられて立ち上がると、ユアンはフィーネを
探しに部屋をでた。
家の中に姿はなく、娼館に足をむけ裏口から食堂を覗きこめば、
店開きをまえに、マリーが食堂のテーブルを綺麗に拭きあげていた。
「あら、ユアンさん、身体はいいんですか」
マリーに話しかけられ、ユアンはにっこりと笑みを返す。
「うん、ところでフィーネを見なかった?」
「見てませんけど」
「フィーネなら知らない男とでて行ったわよ」
割って入った声に目を向けると、カウンターに座った娼婦のひとりが
意味深な笑みを浮かべ、こちらを見ている。
「フィーネ=モルトンって女がいるだろうって、訪ねてきた男
だったわ」
フィーネの名前を知っていて、フィーネを訪ねてきた男、誰だ?
「どこへ行ったかわかる?」
「さぁ? 馬車に乗って行ったけど」
「何時!」
ユアンの剣幕に、カウンターにいた娼婦は、焦ったように声をつまらせた
「ちょ、ちょっと前だと、思うけど」