甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

   「伯爵家には二人の娘がいて、上の娘には婚約者がいた。
    家庭教師として働いていたその女の子は、夜会の晩、
    そのハンサムな婚約者と出会い、運命的な恋に落ちる」

   「きゃーっ ♡」


 ユアンの言葉を聞き騒ぐ女の子たちを眺めながら、フィーネは唖然と
 した。

 運命的な恋ですって?!


   「ね、それが今度のお芝居になるの?」

   「うん、そうかもね。まだはっきりとは、決めてない」


 問いかけてきた娘に、ユアンは極上の笑顔をみせると立ち上がった。


   「さあ、おしゃべりはもうお終い。」


 ユアンの声に娘たちも渋々といった風でたちあがり、こちらに歩いてこようと
 する。

 フィーネは咄嗟に物陰にかくれた。


   「ユアンのお話楽しみね」

   「家庭教師の女の子の恋が実るといいわ」

   「ふふっ」


 楽しげに話しながら女の子たちは歩いていき、それを見送ったフィーネは
 後ろからぽんと肩をたたかれ飛び上がった。

 振り返ればそこには怪訝そうな顔をしたユアンが立っている。


   「こんなところで何してる?」

   「い、いえ、私は別に、何も、」


 吃りながらそう答えたフィーネをじろじろ見ていたユアンは、ズボンの
 ポケットに手を突っ込むと、顎をしゃくった。


   「ついて来い、朝食まだだろう」
< 24 / 211 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop