甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

   「じつは、薬を手に入れても、届ける方法がなくて」


 そう言うフィーネに酒屋の息子が胸をはる。


   「俺が届けるよ」

   「本当に?」

   「その代わりって言っちゃあなんだけど、俺とデートしてくれないかな」


 デート......。

 見るからに人の良さそうな顔で、女の子を誘いなれていないのだろう、
 ちょっと頬を赤くした彼は、熱心にフィーネを見つめている。

 短い黒い髪に、小さな目、けっしてハンサムじゃないけど。
 
 誠実そうな人だわ、デートしてもいいかも......。

 その時なぜかユアンの顔が頭にうかんだ。

 途端に、戸惑いが胸のうちに広がる。

 でも、フィーネはすぐに目の前の彼に意識をもどした。

 
 _ _嘘つきな誰かとは大違い、この人は約束を守ってくれたもの_ _


 いいわと、YESの返事をしようとしたとき、すぐそばで草を踏む音がして


   「フィーネ」


 と名前を呼ぶ声がした。

 よく知っている声。

 振りむけば、いつの間に近くに来たのかユアンがいて、彼はじっとフィーネを
 見たがそれ以上はなにも言わず、くるりと身体を酒屋の息子にむけると
 つっと手をのばして薬の袋をその手から取りあげた。


   「あっ」


 酒屋の息子が焦った声をだし、手を伸ばす。

 だがユアンは、その手を遮ると


   「買ってきてくれてありがとう、これは、僕が届けるからいいよ」


 と、にっこりと笑った。

 見るものを魅了する、いつもの完璧な笑み。

 でも...... あれ?

 

 
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