甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋 

 顔は笑っているけれど、なぜか不機嫌に見える。

 しばらくユアンとフィーネを交互に見ていた酒屋の息子も、
 それを感じ取ったのか、急に弱気な顔になると


   「そうですか、それじゃ、俺はこれで」


 というと、そそくさとその場を去っていった。

 その背中を見送っていたフィーネは、ユアンが何も言わず薬の袋を持った
 まま歩き出したことに気づいて、慌てて声をあげた。


   「ユアン!」


 呼びかけても、彼はふりむかない。

 フィーネは急いで後を追うと、ユアンの腕を掴んだ。


   「なに?」


 やっと足を止めふりかえったユアンが、冷めた表情のままフィーネを見る。

 ユアンはいつもフィーネに対して、そんな感じだ。

 あの、一緒に買い物したとき以外は。

 ただ今は、もう少し不機嫌そうに見える、さっきの笑顔のときもそう
 だったけど。


   「薬をどうするつもり? 返してちょうだい」


 少し怯みながらもフィーネがそう言うと、ユアンは、あぁ...... と薬の袋を
 かざしてみせた。


   「僕が届けるって、さっき言っただろ」

   「どうして? あなた、あんなに薬のことは反対してたでしょ」

   「事情が変わった」

   「?」

   「あの工房に用がある。ちょうどこれから出かけるから、この薬は
    届けるよ
    君も来たければ、来ればいい」
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