甘い罠には気をつけて❤︎ 俺様詐欺師と危険な恋
ユアンの斜め前までいき、そっと首元に手を伸ばす。
ボタンをはめながら伺うと、ユアンは目の前の鏡をまっすぐに見つめて
いて、フィーネの方は見ていなかった。
冷めた表情を際立たせているアイスブルーの瞳が、自分を見ていないこと
に安心しつつも、なんだか物足りなくも思えてフィーネは落ち着かない
気持ちになる。
しかし、本当にとめずらいボタンだ。
それになんだか、指がうまく動かないし。
少し時間はかかったが、なんとかボタンをはめ終わったフィーネは腕を
おろしかけたが、ユアンの首の左側、襟の端で隠れるぎりぎりところに
赤い虫刺されのようなものを見つけて再び腕をあげた。
「虫刺されかしら、赤くなっているけど」
そう言いながら指を伸ばす。
しかしそのフィーネの指先をユアンが、ぱしっと掴んだ。
まるでそこに触れさせまいとするように、フィーネの指を掴んだまま
首筋から遠ざけると、ユアンはフィーネを見下ろす。
「な、なに?」
ユアンの行動に面食らって、目線を合わせてそう問うと、ユアンはさっと
目を逸らした。
「なんでもない」
という口調はひどくぶっきらぼうだ。
そのままフィーネから距離をとるように、さっと身を翻すと
ソファの背にかけてあったタイを手にとり、鏡に向かって
結び始める。
何よ......その態度。
フィーネはちょっとむっとしたが、ユアンがまだ怒っていて、だから
そんな態度をとるのかと不安にもなった。