夢みるHappy marriage


「年収は800万……、いや700万以上、身長は172……いや170cm以上で」

眉間に皺を寄せながら、アドバイザーさんに新たな条件を告げる。
微妙なハードル下げ、私の中では苦渋の決断だった。

「年齢は、ん~……40まで可!」
「はい、これで再設定させて頂きます」

ニコニコしながら私の要望をパソコンへ入力していくが、私の心はどうにも暗い。
だって今まで年収1000万以上、最高3000万の人とお見合いをしてきたのだ。

ここまで条件を下げると、これじゃ玉の輿婚なんて言えない、誰もが羨むセレブ婚じゃない。

がっくり項垂れている私に、あ、と何か気付いたようにお姉さんが提案してきた。

「この方に申し込んでみませんか?」

そう言って目の前に出されたパソコン画面。
そこには夢のような条件が並んでいた。

年齢32才、身長182cm。
最終学歴は日本最高峰の国立大学卒業、外資系コンサルティング会社の若手社長にして年収8000万。

は、は、8000万、8000万、8000万……、

頭の中で繰り返しエコーする数字。
今まで会ってきたお見合い相手の年収を上回る最高額。


……何、この夢のようなスペック。まさに最後の希望、藁にも縋る思いでその一類の望みに賭けることに。

そして数日後の返事は、まさかまさかのお見合いOK。
またしても若さとまずまずの容姿で土俵には立てることに。

相手の立場上、顔写真は載せておらず容姿は分からないが、この条件だったらハゲだろうがデブだろうがどうだって良い。性格が残念だろうが関係ない。

私は、むしろ金から愛さえ生まれると思っている。

きたるお見合いの日に向けて、日々の手入れを入念に行っていた。
まずまずの容姿を少しでも底上げするために。

あまり自分に誇れるものはないが、自分の化粧の技術とスキンケア、そして全身のボディケアに体型維持。
とにかく美容に関する努力を惜しまないことだけは胸を張れる。


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