夢みるHappy marriage
「ま、待って、グラス取って、もう少し酔いたい」
「それ以上酔っ払ってどうすんだよ」
「あとで、忘れられるように……っ」
「忘れられると思ってんの?」
意地悪く笑った後、その唇が私の口を塞ぐ。
びっくりして、その胸をぐっと押して突然の口づけから逃れた。
「ま、待って、言っとくけど私、数年前までデブだったし、化粧の仕方も分かんないようなブサイクだったし。痩せたあと初めて付き合った正吾君とさえ、彼も奥手だったからあの頃は高校生も笑っちゃうようなお付き合いしてて。まともなキスだって数える位しか、」
「……知ってる」
「え?私のデブス時代を?」
「そろそろ黙ろうか」
飲む?そう言って、テーブルからグラスを取ってくれた社長の手から、グラスを受け取ろうと手を伸ばしたところ、そのグラスはそのまま社長の口元へ運ばれた。
シャンパンを口に含むとそのまま再び口づけされる。
そのまま送り込まれる液体、どうしたら良いか分からず眉をひそめると、私の顔を見据えるように見つめてくる。私が困惑していることに気付き、私の喉仏に骨ばった親指がなぞる。
まるで飲むように促されるように、従うしかなくてこくんと喉を上下させてその液体を飲み込んだ。
……頭がクラクラする。
いつの間にか、口の端から漏れたシャンパンが顎を伝っていく。
社長の大きな手が私の髪、頬に優しく触れてまた唇を塞がられる。
こんな甘いキス知らない。
胸がどんどん苦しくなる。
息継ぎも分からなくて、社長の胸を手で押すとその手をとられて、固い窓へ縫い付けられる。
このまま、キス以上のことをされてしまうんだろうか。
目をぎゅっとつぶると涙が零れ落ちてきた。
もうどうしたら良いのか分からなくて、頭が真っ白になって何も考えられなくなる。
触れた唇、手、頬に全神経が集中して、触れたところから熱を帯びて行く。
体がふるふる震えるのが自分でも分かった。
胸がきゅっと締め付けられる。
どうして?
なんで、この人にこんなにときめいてるの……?
気付いたらボロボロ涙を流していた。
「……どうしてそんな顔してるの?」
「え?」
「お金にときめくんじゃなかったの?」