夢みるHappy marriage
「最初から好きな人と結婚っていう考えがないんだな」
「ないない、そんな夢ばっか見てらんないの、私が見てるのはシビアな現実だけ!愛は人を裏切ってもお金は絶対に裏切らないでしょ?お金からその人に愛着が湧くことはあっても、愛からお金は生まれないの。これがこの世界の理なの」
「……へぇ、じゃお金があれば誰でも良いんだな?」
「まぁ見た目はどうでもいいよね。デブでもハゲでも、年収次第じゃ40過ぎだって良い。性格だってある程度は目をつぶる。ただ、私に惜しみなくお金を使ってくれる人だったら。私は何よりお金にときめきを感じるから」
……やば、私酔っ払って調子に乗って喋り過ぎじゃない?
しかも、この人の機嫌どんどん悪くなってる気がするんだけど気のせい?
なんなの、この人のスイッチ本当分かんないんだけど。
「……お金もらって、関係を持ったことあるのか?」
「え?あー、きょ、興味あるよね。今ちょっと流行ってるじゃん、デートクラブとかさ。お金持ちのおじさまとデートするだけでお金もらえるやつ」
どんな返事をすれば正解なのか分からず、あえて明るく振舞う。しかし、それとは裏腹にどんどん雲行きが怪しくなっていく社長様の表情。
なんなの、猫かぶってた方が良かったの?
「じゃ、もし一回10万払うからキスさせろって言われたらする?」
「するする!一回10万とかやばいでしょ」
「そう、じゃしようか」
……は?
今、なんと。思考回路が追い付かなくて、私の頭は機能を停止する。
今日一番重苦しい雰囲気、この沈黙に耐えきれず、冗談でしょと笑って見せると、腕を引かれてすぐ隣の大きな窓へ背中を押し付けられる。
「え、本気でするの……っ?」
「自分でするって言っただろ」
「だ、だって、全然そんな雰囲気じゃなかったじゃん」
そんな甘い雰囲気じゃなかったじゃん、むしろどっかの誰かさんの機嫌が悪くなって殺伐としてたじゃん
ネクタイをゆるめて、私の足の間に割って入ってくる。これじゃもう逃げられない。顔をくいっと掴まれて顔が近づいてくる。
「ま、待って……っ」
なんで、なんでこんなに胸がざわつくの。本当、私、どうしようもない。
こんな訳分からない、社長様の気まぐれに、胸ときめかせてるなんて。